AIでアプリは増えた。それでも市場が広がるとは限らない
Keyro Academy · 2026-09-25 · 188 回閲覧
App-Slop、売上・利用時間、継続率から見る「作る」と「使われる」の差
AIコーディングツールによって、アプリを形にするまでの時間は短くなりました。一方で、公開数が増えれば、そのまま利用者や売上も増えるのでしょうか。
a16zが2026年9月に公開した分析では、iOS、Android、Chromeの月間新規アプリ数は過去の水準から2〜4倍に増えた一方、ダウンロード数や評価数はおおむね横ばいでした。a16zは、供給だけが増えて十分な利用を得られない状況を「App-Slop」と表現しています。
出典:a16z「Charts of the Week: So Many Apps, So Little Time」
供給は増えても、人の時間は増えない
同じ分析が引用するSensor Towerの推計では、2024年12月を100とした米国アプリ市場の指数は、2026年8月時点で売上102、総利用時間107でした。約1年半で売上は約2%、利用時間は約7%の増加です。新しいアプリの供給速度と、市場全体の伸びには大きな差があります。

図:a16z掲載、Sensor Tower推計(2026年9月16日時点)。提供された原画像を使用。
開発できる人が増えても、有料で使う人の数や、1日に使える時間は急には増えません。AI以前は開発能力が希少でした。AI以後は、作る能力より「誰の、どの問題を、継続して解決するか」が希少になります。

図:供給と有料需要の関係を示す概念図。提供された原画像を使用。
AIアプリは売れやすいが、継続は別問題
RevenueCatの「State of Subscription Apps 2026」は、11万5,000超のアプリと160億ドル超の売上データを分析しています。同社の中央値では、AIアプリは非AIアプリより有料化や利用者当たり売上で優位でした。一方、12カ月後の年間プラン継続率はAIアプリ21.1%、非AIアプリ30.7%。返金率の中央値もAIアプリ4.2%、非AIアプリ3.5%でした。
出典:RevenueCat「State of Subscription Apps 2026」
この数字が示すのは、「AI」という表示だけでは長期的な価値にならないことです。最初に試してもらう力と、使い続けてもらう力は分けて考える必要があります。
例外は、AIを直接使う生産性アプリ
a16zのカテゴリ別分析では、利用時間と売上の両方が大きく伸びた主要カテゴリは生産性でした。ChatGPT、Claude、Gemini、Grokなど、AIそのものを仕事の入口にするサービスが成長を牽引しています。
ここから「AIで作ったアプリは売れない」と断定することはできません。観測できるのは、作るコストが下がって供給が増えた一方、市場で選ばれる条件は緩んでいない、ということです。
作る前に確認したい4点
- 利用者を一文で定義できるか:全員向けではなく、困っている場面を特定する。
- 既存手段より何が改善するか:時間、費用、ミス、手順のどれが変わるかを測る。
- 翌週も使う理由があるか:初回の驚きではなく、反復する仕事に入るかを確かめる。
- 公開後に直せるか:問い合わせ、失敗、解約理由を拾い、改善につなげる。
AIは開発の速度を上げます。しかし、利用者の理解、品質管理、運用、信頼まで自動で完成させるわけではありません。作れるものの数ではなく、使い続けられる価値を設計することが、AI時代のアプリ開発の中心になります。
出典確認日:2026年9月25日。図表は米国市場の推計を含み、すべての国・アプリに同じ傾向が当てはまるとは限りません。